お嬢様 × 御曹司
「あの執事さんって、聖夜の誕生会の時、かなり威圧的なオーラ出してたんだ。」


また人差し指を立てる。


なるほど。


きっと、推理をするときのたけくんの癖なんだ。


「あの執事さんがいなくなったってことは、悪さしやすくなったってことだ。」


悪さ?


あからさまに「意味がわかりません。」って顔を私がしてたんだろう。


たけくんは、目は真面目のままだけど、優しく笑って、私を見る。


「わかりやすく言うと、美味しい餌を狙ってる鳥が何羽もいる。でもその美味しい餌には、人間の硬いガードが付いている。いつもは…」


「ちょ、ちょっと待って!」


私は、スラスラと例え話をし始めたたけくんの言葉を遮る。


自分が話している間に他人から話しかけられると、見てわかるぐらい驚いたようにキョトンとするんだよね、たけくんて。


私は小さく頭を振った。


…違う違う!私が言いたいのはそのことじゃなかった。


「美味しい餌って…」


「うん、聖夜だよ。」


ふざけてる風もなく、ただ淡々と事実を述べた彼に、私は少し呆れつつ、そんな彼が可愛いとまで思った。


よしよし、なんとなくわかってきた。


他の例えも考えてみよう。


人間のガードが陸(兄さんの専属執事)で、鳥が…多分私に悪さをしようとしてる人。


「正解正解。まあ、鳥の場合は日野原財閥に恨みを持ってる人って言った方が簡単だけど。」


そう言って、空っぽのグラスを持って、たけくんは歩き出した。


私もグラスを落とさないようにして慌てて付いていく。


前を歩いていたたけくんはくるっと振り返り、私を見て少し顔を赤らめていった。


「食べながら話そう。お腹すかない?」


私は、恥ずかしいそうに頭を掻いたたけくんを見ながら思う。


どんな話をしていても、彼は彼のままなのだと。


そして、なぜだかそんな彼に、私は惹かれているのだと。


「うん。そうしよ。私も、ちょうどお腹すいたから。」




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