お嬢様 × 御曹司
「ごめ…」


「まあ、気持ちは分からなくもない。」


え?


思いがけないたけくんの言葉に私が反応できたことは、口を開けて固まるという本能のみだ。


人間、ここぞという時の反応はいたってシンプルに作られている。


そういうわけで固まっている私に優しく、そして少し恥ずかしそうに顔を赤らめて笑いかけてくれる。


「俺も、ちょっと息抜きしたいなって、思ってたところだから。」


「本当に、いいの?たけくん、怒られるかも…」


そう言うと、コツンと頭を軽く叩かれた。


たけくんに叩かれるのは二回目だけど、嫌な気はしない。


むしろ嬉しい…?


馬鹿、何言ってんの私!


「言い出しっぺが何をいまさら。行きたくないなら、無理に行かせたりしないよ。俺の立場上、君に危ないことはさせられないからね。」


つまり、行きたいなら行かせてやるけど、行かなくてもいいなら無理にいかない。


どうしても息抜きしたいのなら付き合ってやる…と?


たけくんがそう言ってくれるなら、行ってみてもいいんじゃないかな?


もちろん私の答は決まってる!


自然と持ち上がった口角なんか気にせず話す。


「行こう!会場の外へ!」


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