お嬢様 × 御曹司
「あなただって辛いのでしょう。財閥の娘であることが。だから今日だって自由を求めたんだ。一時の自由でさえ許されない。なんて悲しい女の子なのでしょうか。」


あんたに何がわかるんだ!


私は、日野原の子に生まれてよかったんだから!


これ以上、好き勝手言わないでよ!


私は犯人を睨みつける。


「…なんですその目は?失敬…言い過ぎました?でも、あなたは今だって自分の居場所がないことをご存知でしょう。」


「っ、」


ドキリと胸がなった。


なんでこいつにイラついているのかやっとわかった。


どれも心のどこかで思っていたことなんだ。


普通の子になれない、私は変わった、異常な子なんだって。


だから、そんな私が彼を想うだけで、きっと、彼にまで辛い思いをさせることがあるだろうって。


「学校にあなたの居場所はありますか?」


犯人が立ち上がったのが音でわかる。


コツコツと足音がする。


「本家に、あなたの居場所はありますか?」


一言発するたび、一歩、また一歩と近づいてくる。


私は、対抗するように少しづつ後ずさる。


こいつに何がわかる。


「パーティ会場に、あなたの居場所はありますか?」


震えたりなんかするもんですか。


こんな奴に、私の本音を悟られてたまるもんですか。


本当の苦しみは、こいつの言葉じゃ表せない。
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