お嬢様 × 御曹司
私は、それから目を閉じてうな垂れるようにしていた。


こいつに耳を貸すのはやめよう。


かなり痛いところを突かれたんだよね。


確かに、私はたけくんを好きになった。


絶対、絶対絶対、一目惚れってやつで。


同じ財閥の子だから、これまでの生き方もこれからの生き方も似てる、似てると言い聞かせて。


でも…違った。


ううん、本当は気がついてた。


けど、私が否定してただけ、なんだよね。


彼は、普通に生きる道も選べる人間。


でも、私は普通の人生は生きられない。


生まれてから死ぬまで、日野原財閥のご令嬢として生きていく。


その、レールの上を走るのが私の役目だから。


本当はね?私だって、普通に生きたいよ。


もちろん、この生活が嫌なわけじゃない。


でも…13年間、友達ができないのは辛い部分がある。


みんなが思うお嬢様って、なんでも持ってて、悩みがなくて、強くてかっこいい。


実際そんなんじゃ、ないんだよ。


花は友達だけど、一線があるのは私も気がついてる。


普通の人が持てるものを、私は持てない。


普通の人ができることが、私はできない。


それがどんなに辛いことか、みんなにわかる?


頬を何かが伝った。


「愉快愉快。」


私の涙を見たこいつは、悪い笑みを浮かべた。


お前に泣かされたわけじゃないけど、と反論したいのにできないのが悔しい。


早く、誰か来てくれないかな?
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