お嬢様 × 御曹司
武士道 -救出-
《武士 SIDE》


「だいたいの話はわかりました。」


キーキーっと交通違反ギリギリの運転で街の中を飛ばす後藤。


俺のスマホを一度見て道を覚えてしまうぐらい記憶力のいいやつだ。


「帰ったら、お父様からかなりの罰を受けると思いますから、覚悟しておいてくださいませ。」


「そんなのは承知の上です。」


俺がどうなろうと、早く聖夜を助けられるなら構わないさ。


聖夜から目を離した俺の失態でもあるんだから。


でも、あんなに嬉しそうにブランコを漕ぐ聖夜を見られたんだから、脱走は後悔してないけどな。


「犯人の目星ですが…」


「それならわかります。私の前に聖夜様と話していた、森様でしょう。」


陸という執事がいないことを真っ先に確認したのが怪しい。


後藤の話を聞くと、誕生祭にも来ていたという話だ。


だとすれば一番怪しい。


「ご名答です。こちらでも調べましたが、簡単に足がつきました。」


そう話しながら運転の仕方が変わらないのが素晴らしいというか、恐ろしいというか…。


「今回のパーティに参加しており、なお、誕生祭に参加している人は、30人ほどしかいませんでした。そのうち花に確認し、手渡ししたのは6人。うち、今確認が取れないのは、森様だけです。」


「単独犯ですか?」


チラッと俺に目線を合わせ、すぐに前を向く。


「ガードマンが捕まえたひったくりと被害に遭った女性。」


今話すことなのか?と思ったが口にしない。


後藤はその辺しっかり判断できるやつだから、森様に関係のある話なんだろう。


「軽く脅したらペラペラ話しだしました。知らないおじさんに20万円やるからひったくりとひったくられた被害者の女性をえんじろと、そう言われたそうです。」


20万円って人を動かす力があるのか?


俺の様子を見て後藤は呆れた顔で話を続けた。


俺の金銭感覚がうかがえる。


「ホームレスだったらしいのです。」


「そうか。」


それにしても、なんて酷いやつなんだ。


人を金で雇って、捕まったってどうも思わないなんて…。


「確かにあの時はことがうまく運び過ぎていた気がしたんです。気持ち悪いぐらいに。」
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