お嬢様 × 御曹司
-カチャ


「鉄パイプじゃ、拳銃にはかなわないでしょう。」


私は、その発言でやっと、私のこめかみに拳銃を突きつけられたことを知った。


どうせ、私が死んで父さんが悲しむ顔を見たいだけなんでしょう。


そんなことのために、私を使わないでよ!


私は、自分で私の道を生きるんだから。


「ふざけるなよ…」


「‼︎」


犯人さえビクッと肩をフルわせた。


威圧的な空気が漂う。


たけくんの声はひどく低く、地面を震わせるぐらい怒りに満ちていた。


「ふざけるな。聖夜には何の罪もない。お前の欲望のために聖夜を利用するな。」


そう言って、一歩近づく。


犯人は、私の頭に拳銃を突きつけておけばいいものを、本能的にたけくんに向けた。


たけくんの思い通りに事が進んでいるとも知らずに。


ほんと、マヌケ。


「お、お前に私の気持ちがわかるわけないだろう!」


「あぁわかんねーな!お前の気持ちなんて!財閥の社長を憎んで、憎みすぎて周りが見えなくなってか弱い女の子まで巻きこむお前なんてくそくらいだ!そんな奴の気持ちがわかってたまるかよ!」


彼の目には、魂が宿っている。


口は悪くなってるけど、正々堂々犯人と向き合っている彼は、かっこよかった。


あれが、武士の瞳。


「昔、武士は一対一で戦った。どんなに部が悪くても、相手が自分より強くても真正面から戦った。」


また一歩。


彼は犯人に歩み寄る。


「男なら、武士の血が流れてるはずだ。だが、お前の武士の魂は腐ってる!」


たけくんが言い放った。


これが、彼の武士道。


「うるせぇ!俺に指図すんじゃねぇ!」
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