お嬢様 × 御曹司
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今、私は金色のドレスを身にまとって、壇上に立っている。


私は病院からカウントダウンパーティの会場に戻ってきていた。


会場でも、私の姿が見えないことが噂されていたらしく、壇上に上がるとすぐに、「何かあったのですか?」と質問された。


私は仕事モードでふわりと微笑んで、


「少し体調を崩してしまい、休んでおりました。申し訳ございません。」


と、軽々と嘘をはいた。


ガードマンや会場に残った執事、パーティの関係者などにはもう謝罪を済ませている。


出席者の中に事実を知る者はいないため、すぐに私の言った言葉を信じ、次から次へと、私を心配する声が上がった。


私に付け入るためでも、心配してくれるのは嬉しい。


私はそう思えるようになった。


「ありがとうございます。もう元気になりましたから。みなさま、今日はカウントダウンパーティです。私(わたくし)などが乾杯挨拶をさせて頂けるなど、とても光栄なことです。心より、感謝申し上げます。」


90度の深いお辞儀。


皆、グラスを手に取り、私に注目している。


「と、堅苦しい挨拶はここまで。皆様、次の年がすぐそこまで来ております。ともにカウントダウンを始めましょう。残り、30秒です!」


「「ウォー!」」と歓声が上がり、あちこちで数を数える声が聞こえ始める。


たけくんは、花から渡されたグラスを二つもって、ゆっくりと壇上に登ってきた。


「「15!16!」」


「聖夜、ジンジャーエール。」


「ありがとう。」


今日はいろいろなことがあった。


「「10!9!」」


私は、たけくんからグラスを受け取りながら思う。


今日は、たけくんの意外な一面も、切れたところも、最高に優しい笑顔も、温かさも知った。


この思い出が、私は永遠に忘れないことを願う。


私はたけくんに笑いかけると、すぐに皆様の方を向いて叫んだ。


「あと5びょーーーーーう!」


「「5!4!」」


あと、残り3秒!


「「3!2!1!」」


-リーンリーン…


会場の鈴がたけくんの手によって鳴らされる。


-パンッ!
-シャー!


クラッカーの音に、ワインが吹き出す音。


「「「HAPPY NEWYEAR!!」」」
「「「あけましておめでとう!」」」
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