お嬢様 × 御曹司
そんなこと考えてる暇ないや。


兄さんなんかほっといてさっさと服決めちゃおう。


そう思い鏡を見ながら服を合わせる。


扉を閉める手前で兄さんは立ち止まりこちらを振り返る。


なかなか動き出さないので、思わずこちらから声をかける。


「な、なによ。」


「…」


散らかった私の服たちを見回してから、ボソボソっとつぶやいた。


「今持ってる白のニットのセーターに、そこに落ちてる薄ピンクのチェック柄のスカート。ベージュのタイツ履いて、母さんからもらってた今年のクリスマスプレゼントの蜂蜜色のショートブーツ。真っ白のファー付きコートでもきてけばいいじゃん。」


思わず目が点になる。


あぁ、そうだった。


こう見えても兄さん服のセンスいいんだよね。


「んじゃ、朝ごはんあんがとな…」


眠そうにあくびをしながら出て行く兄さんにあと一つだけアドバイスをもらおう!


「髪型は?」


兄さんを追っかけてブラとパンツのまま階段の手すりに掴まる。


階段を降り始めていた兄は、顔だけこちらに向けてすぐに話し出した。


「下ろすのもいいけど、二つに縛って、片方だけ脇の髪を編み込めば?」


私は満面の笑みで叫んだ!


「兄さん、ありがとう!」


私はすぐさま部屋に駆け込む。





「うん。」


私のお礼の後、兄さんが優しい顔で私を見ていたことを、私は知る由もなかった。
< 69 / 161 >

この作品をシェア

pagetop