お嬢様 × 御曹司
長蛇の列。


昔の人が長蛇ってつけた理由がわかる。


本当に長くてへびみたい。


「ここ、近場だから選んだんだけど…」


たけくんは並ばせてしまったことを悪く思っているらしい。


たいしたことないのにね。


お嬢様は、みんな短気なわけじゃないんですから。


「大丈夫だよ。話してれば順番なんてすぐに来るから。」


「それもそうだね。」


ゆっくりと列が進んでいく。


私たちは、好きな食べ物の話や、朝見たテレビの話。


昨日怒られたこととかについて話して、笑っていた。


列がかなり進んで、あと半分ぐらいのところに来たとき、たけくんが今までの楽しそうな雰囲気じゃない顔で切り出した。


「あのさ、聞きたいことあるんだけど。」


その顔は、私を美味しい餌に例えた話した時の顔。


たけくんが真剣な話をするときになる顔だ。


私は返事をする代わりにコクリと頷いた。


前の列が一歩進んだため、私たちも一歩進む。


「昨日、誘拐されたときに、なんか言われたでしょ?」


-ドキッ


私は無表情のまま固まる。


「…。」


なんで、本当に、わかっちゃうかな?


心配かけないようにしてたのに。


「話したくないなら、無理に話せとは言わない。でも…」


たけくんは、おもむろに私の手を握った。


そして、無意識に俯いていた私が顔を上げると、とても優しく頬んだ。


「花さんにもお兄さんにも話しにくいことはあるだろう?それを、俺に話してみない?溜め込むより、ずっと楽になる。」


「っ、」


あぁ、どうしていつも、あなたはそんなに優しいの?


私はその優しさの前では強がれなくなっちゃう。


あなたが、私を弱くする。


そのことに、君は気がついてる?
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