「君へ」 ~一冊から始まる物語~



「会長ー連れてきましたよ。」

「ご苦労、唯。」


そこには黒縁メガネを掛けた優しそうな人がいた。

その雰囲気はどことなくお兄ちゃんに似ていた。


「はじめまして、小崎玲波さん。雨宮晴さん。話は唯から聞いています。
先日の騒動では迷惑をかけてしまったこと、深く反省しております。そして、ご協力ありがとうございました。」


会長は深く頭を下げて私たちに言った。


「いえ、私は協力したつもりはないので、お礼を言われる筋合いはありません。」

「私も、いじめられたのは会長のせいではないので、頭を上げてください。」


私と晴でこう言うと、会長は素直に頭をあげた。


「ありがとう。そういえばまだ名前を名乗っていなかったね。」


この学校の生徒会会長はあまり表沙汰にはされない。

誰が会長なのか分からない人もいるだろう。

もちろん私と晴もさっきまでそうだった。

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