「君へ」 ~一冊から始まる物語~
「3ーBの衿基 春葵(えりもと しゅんき)だ。」
「珍しい名前ですね。」
「よく言われるよ。」
晴が会長にきくと、会長もすんなり応えていた。
「漢字はどう書くんですか?」
「えりに、基本のきで、季節のはるに、あおいって書くんだ。」
私の質問に衿基会長はフルネームで書いてある名簿を見せてくれた。
だが、私はあることに気づいた。
字は違うけど、『はるき』と読めなくはなかった。
そもそも春稀は『はるき』と読むのかどうかもわからなかった。
私の心臓は徐々に心拍数が上がっていった。