「君へ」 ~一冊から始まる物語~
その日の帰り、晴と別れてから思わず唯都にきいた。
「ねぇ唯都。夛成来先輩ってどんな人?」
「夛成来先輩??」
「うん。」
唯都は不思議そうにしていたがすんなり答えてくれた。
私が人の事を知りたいなんて余程の事情があると思ったんだろう。
「夛成来先輩はいい人だよ。人が嫌がる仕事を進んでやってくれるし、後輩の面倒みがいいんだ。」
少し意外だなと思ってしまった。
「でも、去年の春、妹さんを事故で亡くしたみたいでさ。」
「えっ?」
唯都の口からは驚く言葉が飛び出てきた。
「そっから後輩の女子が苦手になったみたいでさ。」
私は海麗さんが男の格好をしている理由がわかった。
「ねぇその妹さんの名前ってわかる?」