「君へ」 ~一冊から始まる物語~


私は何となく聞いてみた。


「あぁ。1度だけ聞いたことがある。確か...」


私は次の唯都の言葉に思わず立ち止まってしまった。


「玲波?」


やっぱり春稀は...


「ううん。何でもない。」


私はまた、唯都に隠し事をしてしまった。


「あんまり溜め込むなよ。」


唯都もそれだけ言って深く聞いて来なかった。








『稀(まれ)さんだった気がする。』






そう言った唯都の言葉が頭から離れない。


春に亡くなった稀さん。


春稀はそういう意味なんだろうか。

私は気になって一睡も出来なかった。

< 111 / 254 >

この作品をシェア

pagetop