「君へ」 ~一冊から始まる物語~


歳の離れた妹がいたこと
自分が引かれそうになったのに、車の運転手が避けて、妹さんをひいてしまったこと
妹さんが最後に『ありがとうお兄ちゃん。』といったこと。



色々話してくれた。

話をきいていると、他の子の声が増えてきた。



「ごめん引き止めて。」



私は最初と違う理由で泣きながら首を横に振った。




「最後にお願いがあるんだ。」

「何ですか。」

「君は声も似てるんだ。『お兄ちゃん』って1度だけ呼んでくれないか?ごめんやっぱり嫌だよな。」




きっと夛成来先輩は唯都から私の過去を聞いているから謝ったんだろう。



「いえ、お役に立てるのなら喜んでやります。それに最後なんて言わないでください。これから何回だって頼みごと聞きますよ。」



私はそう言ってから思いっきり空気を吸った。



「お兄ちゃん。」



私が言い終わると夛成来先輩は涙を溢れさせていた。



「ありがとう。ありがとう。」



そう何回も言ってくれた。

私はそんな夛成来先輩を今度は見つめる事しか出来なかった。

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