「君へ」 ~一冊から始まる物語~
そんな事はもちろん知っていた。
特に同い年である俺は何度か見かけたことがある。
でも何もしてあげられなかった。
当時の俺はそれが悔しくてたまらなかった。
「だから俺達は近づいては駄目だ。
俺は昨日あの子に俺の妹だと名乗るなと言った。突き放すような事もしている。きっとあの子は俺を嫌いになっただろう。」
そう言っている青兄は凄く寂しそうだった。
「だから頼む!あの子を、玲波を守りたいんだ。」
俺と兄貴は顔を見合わせてから青兄の頼みをきいた。
それがあんな事に繋がるなんて思ってもみなかった。
青兄が頼みに来てから2週間。
それがあの出来事が起きた日だった。
夜、学校の復習をしているときに急に窓から青兄が入ってきた。
「唯!!都を呼べ!!」
ただならぬ顔で入ってきた青兄を見て俺は急いで兄貴を呼んだ。
「玲波がこれを置いて出ていっちまった。」
そう言って青兄が見せたのは玲波の字で『遺書』と書かれた紙だった。