「君へ」 ~一冊から始まる物語~
青兄は手術室に入ったきり、玲波はさっき集中治療室から出てきて、今は個室で眠っている。
俺は背中を少し縫っただけですんだ。
玲波はいつ目を覚ますかわからないそうだ。
医者には精神的ショックが大きかったせいだろうと言われた。
俺はそれを聞いた瞬間、生きている心地がしなかった。
『唯都。』
『唯都!』
『唯都?』
目を瞑れば玲波が俺を呼んでいる顔が浮かび上がる。
「玲波〜れいは〜」
俺はそんな玲波の呼びかけに答えるように何度も何度も名前を呼んだ。
夜の病棟に俺の玲波を呼ぶ声と泣き声が響き渡った。