「君へ」 ~一冊から始まる物語~
朝になると玲波たちの両親がきた。
でも玲波の所には行かず、未だ手術室から出てこない青兄の心配ばかりしていた。
「ありがとう。都斗君、唯都君。」
「いえ、僕達が無力なせいで...」
兄貴が謝った。
「あなたたちは悪くないのよ。あの娘がいけないの。」
俺は全て玲波が悪いと言わんばかりのおばさんの態度にカチンときた。
「おばさん。玲波のところに行ってあげてください。」
気づけば俺は口を開いていた。
「あの娘はもうこの世にいたくないんでしょ。だったら1人で勝手に行って欲しかったわ。...青波は...連れていかないで...」
最後らへんはおばさんは涙ぐんでいた。
でも、俺はちっとも同情できなかった。
むしろ怒りのほうが俺の中から込み上げてきた。
『元はと言えばあんたらのせいで玲波が、青兄がこうなったんだろ!!!』
俺は叫びたくなった。
が、それは兄貴の手によって防がれた。
兄貴は俺の肩に手を置いた。
その手は小刻みに震えていた。
多分俺以上に怒りを我慢しているんだと思った。