「君へ」 ~一冊から始まる物語~
「延命治療は受けません。」
そうはっきり言ったおばさんの声が遠くから聞こえた。
「わかりました。残りの時間を小澤さんと過ごして上げてください。」
俺はどうしたらいいのか分からなくなった。
おばさんの答えが正しいのか、俺の考えが正しいのか。
その答えにたどり着くのもどうでもよくなった。
俺はそのまま3日間親に頼んで、玲波の病室にずっといた。
学校はテスト週間だったが、シャーペンを握ることさえしなかった。
その代わりずっと玲波の手を握りしめていた。
そうじゃないと玲波が消えそうで不安だったからだ。