「君へ」 ~一冊から始まる物語~
俺が玲波をなだめていると、おばさん達が入ってきた。
さすがに仲が悪いとはいえ、娘があの世から帰ってきた事は嬉しいに違いない。
あの言葉を聞くまでは俺も兄貴もそう思っていた。
「お前が死ねばよかったのに。」
玲波の方を見ると酷く傷ついた顔になっていた。
俺は玲波の綺麗な瞳にそれ以上汚れたものを見せたくなかった。
だから俺は玲波の前に立って視界を遮断した。
その俺の前に兄貴が立った。
兄貴は後ろで手を組んでいたが、爪が片手の手にくい込んで血が滲んでいた。