「君へ」 ~一冊から始まる物語~
「もしもし。」
『もしもし玲波ごめんさっきの変換...』
「うちのことね。」
『そうそう。後荷物取りに来るでしょ?』
そこで私は今、スクールバックしか持っていないことに気づいた。
焦り過ぎて荷物のことも考えてなかったのかと自分に苦笑いした。
「ねぇ今唯都居る?」
私は大学に居る都兄に変な質問をしてしまった。
『俺今大学だよ?』
私の予想通りの応えが返ってきてしまった。
『唯都と何かあったの?』
しかし都兄はそれだけではなかった。
都兄は会話の上では変化球が1番得意かもしれない。
「何にもないけど荷物を頼もうとしただ
け。」
私は内心、都兄に謝りつつ、嘘をついた。
『ならいいんだけど』
「じゃあうちの事お願いね。」
私はこれ以上喋ると都兄にバレそうだったので素早く話を畳んだ。
『分かったよ。楽しんできな。』
それ以上は何も言われなかったので少しホットした。
「うん。じゃあね。」
『じゃあね』
携帯をポケットにしまうと家に唯都がいない事を願いつつ、家に向かって歩き始めた。