「君へ」 ~一冊から始まる物語~


「やけに嬉しそうに教室を出ていくかと思ったらサボりか。」


私は嬉しそうにしてたつもりはないんだけどなと思いつつ開き直った。


「何か問題でも。それに私が居ない方がみんな集中できるよ。」

「俺は心配した。」


唯都は私と話す時、決して目を逸らさない。強い光を持った目で私を真っ直ぐ見る。


「ごめん」


だからいつも折れるのは私。

もう少し言いたいことがあったのだが、声になったのはこの三文字だった。


「弁当一緒に屋上で食べようぜ。」

「私ここで食べたい気分だから他の子と食べてきなよ。」

「俺は玲波と食べたい気分なの。」


昔と変わらなく素で話せるのは唯都と都兄だけだ。
しかもそれを嬉しいと思っている自分も居る。

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