「君へ」 ~一冊から始まる物語~
都兄は自分で朝ごはんを作って食べたらしい。
時計を見るともう7時半を回っていた。
朝ごはんの準備に取り掛かると唯都が降りてきた。
「起きてて平気なの?」
「体少しでも動かしたいから。」
「無理しないでね。」
私は背中の傷痕のことを聞きたかったが、今まで隠してきたという事は余程の事情があるんだろうと思いあえてきかなかった。
「そういえば駅で俺に薬飲ましてくれたらしいな。」
私はなぜ知っているのかと唯都を見つめた。
すると都兄はバツが悪そうに
「あーー兄貴から聞いたんだよ。そのー悪かったな。」
きっとこれを言うためにすごい勇気がいったんだろうと聞いててわかった。
「ううん。いいの。私のファーストキスより唯都がいなくなった方が嫌だもん。」
私は気にしないでという意味で伝えたはずだが唯都の顔はますます険しくなった。