「君へ」 ~一冊から始まる物語~


スーパーに行くといつもの様にタイムセールはやっていなかった。

午前中だから当たり前かと思った。

私たちは相談し、悩んだあげく、メニューは両親の大好きなすき焼きにすることにした。

買った大量の荷物は


「俺が持つ」


と唯都が言って全て持ってくれた。

私の半歩前を歩く唯都の背中には布の上からではあの傷痕は見えなかった。


家に帰るとさすがに病み上がりで疲れたのだろう。

唯都は自室に入り、眠ってしまった。

私も荷物を冷蔵庫に入れるとそのまま唯都と同じく夢の世界へ旅立った。

< 182 / 254 >

この作品をシェア

pagetop