「君へ」 ~一冊から始まる物語~
『俺にも好きな人はいるよ。』
私は自分の目を疑ってしまった。唯都には好きな人がいる。
全く気が付かなかった。
その後の言葉から唯都がその人をどれだけ大事に思っているか感じ取れた。
「私が入り込む隙間ないじゃん。」
私は終わってしまった初恋になかなかさよならを言うことが出来ずにいた。
知りたくなかったなとも思った。
ちゃんと唯都の声で顔を見て聞きたかった。
そんなことを悔やんでも仕方が無いので私は『春稀』に対して意識を集中させた。