「君へ」 ~一冊から始まる物語~



当時近所に、よく事故が起こるT字路があった。(今は信号が取り付けられて事故は激減した。)

私はそこに飛び出すことを決意した。


誰にも相談をしてはいなかったが、一応遺書は書いて、家を出た。

夜の9時頃となるとまだ真夏ではないので、外の空気が肌を掠めると、ひんやりとした。

でも不思議な事に死への恐怖は感じられなかった。


「やっとこれで終わる。」


そう思うと、スッキリしていた。


そしてついにT字路までやってきた。待ってましたと、いわんばかりにトラックも私に会いに来てくれた。

心の中でトラックとトラックの運転手さんと自分の自転車に詫びつつも、私は足の回転を速くした。

もう少し、もう少しで楽になれる。そう思った時、



「れーーーはーーー!!!!」


家から全力疾走してきたであろう兄がギリギリのところで私の腕を掴んで止めた。

しかしその反動で兄がトラックの前に突き出され、4、5m宙を舞った。

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