「君へ」 ~一冊から始まる物語~
私は書いていてすごく胸が苦しくなった。
自分の届かない想いに哀れみを感じた。
春稀か唯都だと知らなければよかった。
好きな人なんて聞くんじゃなかった。
後悔は尽きなかった。
こんなにも人を好きになるのがつらいなんて思ってもみなかった。
だから私は兄妹という関係を変えたくない。
唯都が幸せになっていくのを間近で見る人となることを選ぶ。
自分の想いに厳重に鍵をかけ、私は旧図書室を出た。