「君へ」 ~一冊から始まる物語~
「ただいま。」
お父さんとお母さんと話しながら唯都とすき焼きの準備をしているとちょうど都兄が帰ってきた。
「おかえり都兄。」
「おかえり兄貴。」
「おかえりなさい都斗。」
「おかえり都斗。」
都兄は家族総出のお出迎えに目が飛び出そうになっていたが、また「ただいま。」と言って笑った。
「都斗もかっこよくなったわね。」
「モテるんじゃないか。」
「全然そっちの方はサッパリだよ。孫の顔見せられないかも...でも安心して唯都と玲波が見せてくれるから。」
都兄はサラリと問題発言した。
正直都兄には私の気持ちがバレていると思う。
昔から都兄だけには隠し事ができなかった。
唯都には少しだけできた。