「君へ」 ~一冊から始まる物語~
でもさすがにヒヤッとした。
唯都にも私にも好きな人がいることを知っていたような口ぶりだったからだ。
そしてなんだかんだしているうちにあっという間に最後の夜が来てしまった。
「ねぇ玲波。今日一緒に寝ない?」
お母さんが急に言ってきたので少しびっくりしたが、私も一緒に寝たかったので
「一緒に寝たい!」
と言った。
「久しぶりね。2人でこうやって寝るの。」
私たちは床に布団を2組敷いて寝っ転がった。
「私が小崎玲波になったばかりの時以来だね。」
私はお母さんに気を使わせたく無かったので自分から言い出した。
「そうだったわねー」
私はあまりに温かく、安心できて既に寝そうだった。
「ねぇ玲波。好きな人がいるの?」
「えっ?!」
私はお母さんが直球勝負をしてきたので眠気が吹っ飛んでしまった。
「都斗がそんなふうに言ってたから。」
やっぱりばれたかと思った。
「どういう人なの?」
「告白はしたの?」
「もう付き合ってるの?」
お母さんの質問攻めに私は正直に話す決意をした。
「お母さん。私が誰を好きでも怒らない?」
この質問でお母さんは私が誰が好きなのかをわかったみたいだった。
「うん。怒らないわ。だって好きなんでしょ?それを私がどうこう言う権利はないもの。」
お母さんは優しく微笑んで言ってくれた。
私はめいいっぱい空気を吸って話始めた。
「私、唯都が好きみたい。頭ではダメだってわかってる。唯都も私のことを妹としか思ってないのもわかってる。でも止められないの。だから私は想いを伝えないで自分だけで勝手に想ってることにしたの。」
お母さんはしっかり聞いてくれて、私を抱きしめた。
お母さんの匂いはとても落ち着いた。