「君へ」 ~一冊から始まる物語~
「もう行っちゃうんだね。」
次の日両親が帰る日が来てしまった。
その日は私も唯都も都兄も学校が休みだったので空港まで送りに行った。
「まだ仕事があるからね。完全に帰れるのは1年後ぐらいかしら。」
「都斗、唯都玲波のことちゃんと守れよ。」
「わかってるよ親父。」
「そうそう俺達の可愛い妹だし。」
「大丈夫だよ。お父さん心配しなくても。」
「大事な大事な娘なんだから心配するだろう!」
「全くお父さんの心配症と言ったら、いつも玲波玲波言ってるのよ?」
「おい!」
家族みんなで笑った。
お父さんも最初はムスッとしていたがみんなの笑顔を見て笑った。
「そろそろ時間かしら。」
「そうだな。」
「じゃあ3人とも怪我とか病気には気をつけるのよ。」
「お母さんとお父さんもね。」
そう言って両親はゲートの中に消えて言った。
誰もさよならは言わなかった。
さよならは私たち小崎家が最も嫌いな言葉だからだ。