「君へ」 ~一冊から始まる物語~


「お兄ーーーちゃーーーーん」


私は頭から血を流してぐったりしている兄に駆け寄った。

お兄ちゃんが握りしめていた私の遺書はお兄ちゃんの血でみるみる赤く染まっていった。


「玲波!青波!」


遅れて都兄と唯都がきた。


「救急車を!!!」


普段、声を荒らげることのない都兄が私をひくはずだったトラックの運転手に叫ぶと、トラックの運転手さんは慌てて電話をかけた。

私は血が溢れ出てている場所を一生懸命抑えて兄を抱きしめていた。



「お兄ちゃん、お兄ちゃん、ねえ起きてよ!」



近くから救急車のサイレンが聞こえてくると私はお兄ちゃんをトラックの運転手さんに任せて、一目散に逃げるように走り出した。




自分のせいでお兄ちゃんが...酷いことを言われたり、されたりしたけど、たまに優しかったり、笑顔がカッコイイお兄ちゃんを私は...




転落死か溺死。いずれにせよ死ぬ事はできると信じながら近くにあった橋の上から、川に飛び込んだ。




ついに私は楽園への入口に立つことができたんだ。


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