「君へ」 ~一冊から始まる物語~
やっぱり私はどうしても唯都に幸せになってもらいたかった。
でも春稀の願いは私が幸せになることだった。
もう私は1人で抱え込むことができなくなっていた。
「玲波ちゃん?」
とぼとぼ廊下を歩いていると、聞き覚えのある声が聞こえた。
「莉樹君。」
「どうしたのうかない顔してるよ。せっかく美人さんなのに。」
莉樹君は学年一の女タラシで有名だ。
しかしそれは真実とは違い、困っている女の子を助けているヒーローだ。
でもタラシと呼ばれても否定しない。
『その方が仕事しやすいから。』
と言っているがきっと彼の優しさなんだろうと思っている。