「君へ」 ~一冊から始まる物語~


私たちは放課後、屋上に向かった。

途中下校をするのだろう唯都にすれ違った。


「頑張れ。」


そう唯都が言った気がした。


「ちがっ..」


私はその後の言葉が出なかった。


『違うのに』


でもそれは言葉には出来なくて、届けられなかった。


「玲波ちゃん?」

「ううん。行こ。」


唯都に背を向けて私たちは別々の方向に歩いた。



屋上につくと真っ先に莉樹君が喋った。


「玲波ちゃんって唯都の事好きなの?」

「えっ?!」

「わかるよー。」


そう言って莉樹君は笑った。


「唯都を見ている玲波ちゃんは優しい顔をしているし、さっきの聞こえてたしね。」


私ははずかしくて顔が火照った。


「義理の兄妹なんだよね?」

「うん。」

「だからかな?」

「ううん。きっと自分でも気づかなかったんだけど、もっと前から好きだったんだと思う。」

「そっか。」

「私ね自分が幸せになったら唯都が幸せになれないと思うの。」

「なんで?」

「唯都にも好きな人がいて、その人と結ばれなくなっちゃうから。」


私は素直に言った。



「でも、唯都は私に幸せになってもらいたいって。家族だから当たり前だと思うんだけど、どうしたらいいかわからなくて。」

「そっか。」

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