「君へ」 ~一冊から始まる物語~
莉樹君は黙ってきいててくれた。
そしてしばらくの沈黙があり、やがて莉樹君が口を開いた。
「でもさ、男の幸せは女の子が考えなくてもいいと思う。」
「えっ?」
「男が女の子を幸せにしたいと思うのが当たり前だし、女の子は好きな人を幸せにできるかどうかだと思うよ。」
幸せにする自信はどこにもない。
顔に表れていたのだろう莉樹君が続けた。
「大丈夫!玲波ちゃんなら。ずっと一緒にいたんでしょ?誰よりも唯都を幸せにできるよ。」
私はすごく嬉しかった。
「ありがとう!莉樹君。」
「早く気持ちを伝えに行ってきな。」
「でも...お礼...」
「俺のことはいいから、ね。」
「うん!」
そう言って私は走りだした。
「失恋決定か...」
そんな莉樹の言葉は玲波に届くはずがなかった。