「君へ」 ~一冊から始まる物語~
「...っは...いは...玲波!」
私はきつく瞑った目をゆっくり上げた。
唯都が私を支えてくれていた。
少し目線を外すと、3人の男の人に取り押さえられている男がいた。
しかしその手に包丁はなかった。
「私無事なの?」
「あぁ。ハァ...っよかったっ...」
そう言って唯都は倒れた。
「ちょ...唯都?」
唯都の背中には包丁が刺さっており、制服はみるみる赤く染まっていた。
その時私の頭にはお兄ちゃんが引かれた時の記憶がフラッシュバックした。
「ハァ...ハァ...」
段々唯都の息が弱くなってきた。
「お兄ちゃん!お兄ちゃん!」
私は気付いたらこの世にいないお兄ちゃんを呼んでいた。