「君へ」 ~一冊から始まる物語~
唯都はすぐに手術室に運ばれた。
「どこか怪我はしていませんか。」
看護師さんが血塗れの私を見てきいてきた。
「これ自分の血じゃないんで、大丈夫です。ありがとうございます。」
私は血塗れの姿だったが、それは全て唯都の血だった。
「玲波!!」
手術室の前で祈っていると、都兄が汗だくできた。
「都兄...」
「病院から電話があって、何が起きたんだ!」
私は今までの事を簡単に話した。
包丁を持った男が現れたこと。
唯都が私を庇って刺されたこと。
私は意外と落ち着いて話せた。
「そうか...」
都兄はそれだけ言うと近くにあったお店で服を買って来てくれた。
「これ着ときな。」
「ありがとう。」
私はすぐ着替えて、都兄と一緒に唯都の帰りを待った。