「君へ」 ~一冊から始まる物語~
「.........波。......い波。玲波!!!」
「うっ......」
目を開くとそこは川でも、家でも、楽園への入口でもなかった。
「死んでない...」
「当たり前だ!そう簡単に死なれてたまるか!」
唯都は泣きながら今まで見たことのない顔で私を見ていた。
そこで私は自分が死んだら悲しむ人もいることがようやくわかった。
「心配かけてごめん。...お兄ちゃん...お兄ちゃんは?!」
「......」
突然唯都は黙ってしまった。
「今、あの日から3日経っている。」
話し始めたのは気づかなかったが、ドアの前にいる都兄だった。
「そんなに...」
「青波は事故の後、意識不明の重体だった。」
「だった?」
過去形となってしまっているその言葉に妙な胸騒ぎを感じた。
「青波は今日死んだ。」
――――――死んだ―――――――
その三文字が頭の中を駆け回った。
「嘘だ...嘘だよね?唯都。」
唯都は下を向いて黙ってしまった。
「ウソだーー!青にぃーちゃーーん!置いていかないで!玲も一緒に行くーー!」
私は小さい子供のようにわめき上げ、いつもお兄ちゃんと読んでいる兄と自分を昔の呼び名で叫んだ。