「君へ」 ~一冊から始まる物語~
やがて2人は帰った。当たり前だ。もう夜の7時を回っている。
私は2人と帰るふりをして、旧図書室に向かった。
本校舎から少し離れているそこは見回りの先生が来ることもなかった。
私は右の一番奥の二段目の右端を見た。
私の手紙、あの日の私が書いたアレが挟まっているはずだった。
しかしそこにはあの本じゃないものがあった。
あれよりふた周りも小さく、古びたノートだった。
それの表紙には誰が何を書いたのか明確に記してあった。
『日記帳 小澤青波』
私は一瞬息が止まってしまった。
約5年ぶりに見たお兄ちゃんの字は相変わらずだった。
私は見てはいけないと思ったが、ここにある以上見ずにはいられなった。