「君へ」 ~一冊から始まる物語~


中にはビッシリとお兄ちゃんの字で埋まっていた。

お兄ちゃんの強い想いがそこには書かれていた。

私はお兄ちゃんの事を何も知らなかった。


シスコンだってことも
ヤキモチを焼くことがあることも
早い段階でイジメに気づいてくれていたことも
陰で守ってくれていたことも
私のせいで自分を嫌いになっていることも
私の幸せを一番に願ってくれていたことも
自分の幸せを犠牲にしていたことも


何も、なんにもお兄ちゃんの事を知らなかった。

たった1人のお兄ちゃんだったのに。

私はなんて酷い妹だったんだろう。

私は独りで苦しんでるんじゃなかった。

同じようにお兄ちゃんも唯都も都兄も苦しんでいた
んだ。



私を愛してくれている人がいるんだ。
私を必要としてくれる人がいたんだ。



私は独りで静かに泣いた。


窓から入ってくる月光が私を少し照らした。

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