「君へ」 ~一冊から始まる物語~
でも誰がこの日記帳をここに置いたのだろうと思った。
唯都はまだ病院のはず。
都兄かなと思った時、静かにドアが開いた。
私は慌てて隠れた。
「いるんだろ玲波。」
その声はここにはいないはずの人だった。
「唯都...なんで...」
入院着のまままだ足がおぼついていない唯都がそこにはいた。
「俺、昼に目覚めたみたいで兄貴が玲波が帰って来ないって慌ててたら雨宮にメールしたら
『玲ちゃんなら私と莉樹君と教室に居ますよ。』って返信が来たんだ。
だから医者に頭下げて無理矢理外出許可貰ってきた。」
違う私はそんな事が聞きたいんじゃない。
「もうそれ読んだ?」
私は首を縦に振った。
「どうして...これ...」
「雨宮からメールがきた時ここに向かったんだ。そして玲波からの手紙を抜いて、それを置いた。そして絶対来ると信じて、玲波が来るのを待った。」
私の手紙を抜いたということはやっぱりそうだったんだと私は嬉しくも悲しくも感じた。