「君へ」 ~一冊から始まる物語~
唯都は次の日退院することが決まった。
しばらくは車椅子になるらしい。
背中から刃物が貫通したんだから歩ける方がおかしいと思った。
「俺、体不自由だから学校でも家でも側から離れるなよ。」
唯都はそう言って私を離さなかった。
2人で話し合って、生徒会の皆には正直に話そうと決めた。
もちろんお父さんとお母さんにもいつか話そうと思っている。
唯都の退院の日私たちは2人で学校を遅刻した。
教室に着くと唯都はみんなに囲まれた。
「唯都〜お前が死んだら俺はー」
「俺を勝手に殺すな。」
「もう大丈夫なの。」
「あぁ。しばらくは車椅子にお世話になるがな。」
「本当によかった。」
唯都は本当にみんなに愛されている。
「小崎さんも大変だったね。」
「大丈夫?疲れてない?」
クラスの数人の女子が私に話しかけてくれた。
「う、うん大丈夫だよ。」
私はぎこちなくも笑った。
「小崎さんてそんなふうに笑うんだね。」
誰がこう言った。
少しだけクラスに馴染めたかなと思った。