「君へ」 ~一冊から始まる物語~
時間はあっという間に過ぎるもの。
wバカップルの報告が終わると解散になった。
莉樹君と晴は仲良く手を繋いで帰っていった。
すごく微笑ましく見えた。
「私たちも帰ろっか。」
「玲波。その前に寄りたいところがある。」
「どこ?」
唯都が指さしたのは旧図書室だった。
「あそこ。」
私は頷いて車椅子の取っ手に手を掛けた。
さすがに階段で唯都をおんぶ出来るはずもなく、1段1段ゆっくり上がった。
都兄には遅くなると言ってあるのでまた怒られる心配はない。
唯都を支えて登った後、車椅子を取りにまた戻った。
唯都はとても哀しそうな顔をしていた。
旧図書室に入ると色んな思い出が蘇ってきた。
少し前を春稀が車椅子を自力で押しながら進んでいる。
本たちが喜んでいるようだった。