「君へ」 ~一冊から始まる物語~
番外編
あの日の屋上
玲ちゃんと莉樹君が屋上に行ったかと思うとすごい勢いで玲ちゃんが出て行った。
莉樹君が玲ちゃんのことを好きなのは少し前から知っていた。
私は興味本意で屋上を覗いた。
そこにはうずくまる莉樹君がいた。
「晴ちゃんか。ごめん今、こっち来ないでカッコ悪いから。」
そう言っている莉樹君の目は赤かった。
失恋したんだなとわかった。
「莉樹君はカッコ悪くないよ。」
気付いたら口が勝手に滑っていた。
「えっ?」
「玲ちゃんが好きだったんでしょ?」
「うん。」
「でも玲ちゃんの幸せを一番に考えたんでしょ。」
「うん。」
「そんな莉樹君はカッコ悪くない。」
「ふふっ晴ちゃんて以外とハッキリものをいう子なんだね。」
私は莉樹君の笑顔を見て少しドキッとした。
莉樹君は私の方に近づいてきて、私の肩に顔を埋めた。
「ごめん今だけ貸して。」
私はそんな彼のハンカチ代わりになった。