「君へ」 ~一冊から始まる物語~


私がジュースを買って戻ると2人はだいぶ回復していた。


T字路に一番近い、公園の右端に行き、唯都がお線香に火をつけた。

都兄もまた、少し珍しい百日草が入った小さな花束を置き、その隣に私は本屋さんオススメナンバーワンの今年の人気小説をおいた。

そして私たちは、目をつむり、手を合わせ、一人一人兄に語りかけた。

毎年2人が何をお願いしているのか分からないけど、私は毎年同じことを語りかけている。



「お兄ちゃん、天国で元気にしてますか?事故から4年私は小崎玲波となって、だいぶ経ちます。
唯都と都兄には気を使わせてばかりです。
でも、お兄ちゃんが助けてくれたこの命で一生懸命生きていきます。
これからも私たち兄妹を見守って下さい。」



私はいつもと同じことを言った後、少し付け足した。


「今日2人にも伝えたんだけど、夢が変わりました。私の夢はお兄ちゃんの夢です。頑張って叶えます。」


少し長くなってしまい、私が目を開けると2人は既に終わっていた。


「行くか。」


都兄にそう言われて、私は小説をしまい、唯都はお線香の火を消した。


「お兄ちゃん、また来るからね。」


そう言うと周りに咲いていたクチナシの花が返事をするように揺れた。

歩きだした唯都の顔が赤くなっていることには気づかなかった。

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