「君へ」 ~一冊から始まる物語~
「そんなんで、男子の気を惹くつもり?」
「まじ、うけるんだけど。」
「お前みたいな奴が男子の気ぃ惹けたら、世の中の女子誰も苦労しとらんちゅーの。」
今にも泣きだしそうなクラスメイトの横顔を見た時には私は席を離れていた。
「ねぇちょっと邪魔。」
気づけば私は3人の前に立っていた。
「はぁ?あんた誰?」
「コイツ、自分の兄貴に手をかけちゃった奴じゃん。」
「オー怖っ!」
おそらく3人の中でもトップに従ってる奴らが口を開いた。
真ん中にいるえらい態度のでかいトップらしいやつは私をまじまじと見ていた。
「あんたらもしかして耳悪い?邪魔って言ってるじゃん。」
「なんだテメー」
条件なのに言葉遣いは男子より最悪だ。
私はこういう自分可愛いと思って、何でもトップにいないと気が済まないやつは大嫌いだった。
「自分がモテないからって他の子に当たるのやめたら。醜いのにますます醜くなってるよ。自分で自分をブスにしてるの気づいてないの?そっちの方がウケる。」
「コイツ言わせておけば。」
「お、小崎さん。も、もうい、いいよ。」
私は少し驚いた。私の名前を知っていたんだと。
「あんたもハッキリ言わないと!」
私のほうは残念ながら彼女の名前の一文字も浮かばなかった。
「そ、そんな事言えません。」
「そこでもぶりっ子か?」
3人のうちの一人があざ笑うように言った。
私はそれを聞いた瞬間、私の中の何かが切れた。
そしてそいつの胸ぐらを掴み、昔、兄から教えて貰ったように投げ飛ばした。
「お前相当根腐ってるよ。」
相手は相当頭にきたのか、顔を真っ赤にしながら拳を私にぶつけようとした。
私も反射的に目を瞑った。