「君へ」 ~一冊から始まる物語~
「小崎君にはもう先日友達になってほしいって話はしてあって、小崎君は『この時間にここに行くといい。』って言われて、来たんです。」
そう言って彼女は制服のポケットから手書きの地図を私に見せた。
その字は紛れもなく唯都の字だった。
「私がどんな人か知ってるよね?」
私は確認のつもりで聞いた。
「私は噂なんて信じません!私は見たまんまの貴女を信じます!」
あぁなるほど、唯都を落としたのはこの想いかと思った。
「ふっふっ」
唯都たちの前以外で笑ったのは何年ぶりだろうか。
「いいよ、友達になろ。晴でいいかな?私は玲でいいよ。それと、友達になったら敬語は禁止ね。」
「は、はい!」
「け、い、ご!」
晴は少し困ったような表情を浮かべながらも、
「う、うん。よ、よろしく玲ちゃん。」
さっきまで私に厳しい陽を当てていた光は晴と半分こになりより暖かく感じるようになった。