「君へ」 ~一冊から始まる物語~


「玲ちゃん?」


私はこれ以上考えないようにした。


「何でもないよ。」


そう言って私は兄を指さした。


「小澤青波。私の実のお兄ちゃん。」

「えっ?めっちゃカッコイイじゃん!!今この人は?」


晴は正直に言った。そんな所が彼女のいい所なんだが...



お兄ちゃんの妹の私が言うのもなんだが、お兄ちゃんはとってもカッコイイよかったと思う。

でも、私は黙ってしまった。

晴も何か感じたんだろう。


「ごめん。」


と言った。

私も晴に気を使わせた罪悪感に追われた。


「ううん。ごめんね固まっちゃって。」


そう言って私は晴に全てを話した。






ホントは唯都たちとはただの幼なじみだったこと。

いじめが苦しくて、自殺しようとしたこと。

そうしたら兄が私の身代わりに事故にあってしまったこと。

私を自分のかわりにこの世に残してくれたこと。

大事な兄を殺したとして家族に捨てられたこと。

いろんな人の憧れだった兄を殺した自分を『人殺し
』と呼ばれるようになったこと。

そんな私を小崎家が救ってくれたこと。

唯都たちが家族になってくれたこと。






今までの私の過去を洗いざらい話した。



晴を見ると、目に涙をうかべていた。


「ちょっ、えっ?」

「玲ちゃん...ぐすっ...そんな大変な...ぐすっ...」

「もう過ぎたことだよ。それに今、私には唯都や都兄、それに晴もいる。私はちっとも不幸な人間なんかじゃない。
唯都や都兄は私のことを本当の妹みたいに優しくしてくれる。お父さんとお母さんだって本当の娘みたいに可愛がってくれる。
私はそんな暖かい小崎家が大好きなんだ。私の夢は小崎家に恩返しをする事なんだ。......うわっ!」



私が話しているにも関わらず、晴が抱きついてきた。


「ど、どうしたの?晴?」

「これからは私が玲ちゃんの側にいて、守るよ!だって...だって大切な親友だから。」


あぁ晴はどうしてこうも私に初めてのものをくれるのだろう。


「ありがとう。ずっと親友だよ。」


そう言いながら私も涙を浮かべながら晴を精一杯抱きしめた。

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