「君へ」 ~一冊から始まる物語~
そして晴が帰るとき。
「長いこと、お世話になりました。」
「またいつでもおいで晴ちゃん。」
「ありがとうございます。お兄さん。」
「ちゃんと勉強しろよ。」
「分かってるよ唯都君。」
「また学校でね。」
「うん。バイバイ玲ちゃん。」
この3日間で晴の唯都たちの呼び方が変わった。
都兄はお兄さんに、唯都は唯都君に。
また都兄の晴の呼び方も変わった。
私はかなり複雑な気持ちになった。
私たちは晴の背中が見えなくなるまで立っていた。
「いい子だね。晴ちゃん。」
「大事にしろよ。」
「当たり前じゃん。」
2人の私を見る眼差しはとても優しかった。
晴が帰って、3人になってから思い出した。
『玲ちゃんは小崎君たちのこと、恋愛対象として見てないの?』
晴のせいで、変に意識してしまうようになってしまった。
兄妹なんだから駄目って思いつつも、義兄妹なんだからイイじゃんとも思っている自分がいるのは、紛れもない事実だ。