「君へ」 ~一冊から始まる物語~
「ちょっ...」
「俺さ、正直お前の兄貴がちゃんと務まってるか自信ねぇ。」
「えっ?」
それは唯都が初めて見せた弱音だった。
「傷ついたお前を見て、助けてあげたいと思っても、青兄のようにはなれなくて、逆にお前に迷惑をかけてばかりだ。」
事故後、きっと苦しかったのは私だけじゃなかった。
きっと唯都も都兄も自分を責めまくったのだろう。
「俺と幼なじみじゃなくて、兄妹でもなかったらお前の人生は違ったかも知れない。」
「ちがっ...」
「ちがわない!!」
唯都は泣いていた。
温かい涙が布団を通じて伝わって来る。
事故後初めて見た唯都の涙は綺麗で切なかった。
「俺や兄貴とかかわってなかったらこんな苦しい思いをしなくてもよかったかもしれない!
そう思ったら自分が情けなくて仕方が無いんだ!」
唯都はどれだけ自分を追い詰めたのだろう。