ばかって言う君が好き。
三が日が過ぎ、瞬く間にお正月休みが終わって、初出勤そうそう残業をしていた。
私以外誰もいないオフィス。
響くのは私のカタカタ鳴らすキーボードの音だけ。
みんなお正月ボケに悩まされながらも、今日の分のお仕事を終えたというのに、私だけは今だパソコンから逃れられていない。
30分ほどたっただろうか、しまいには営業を終えた先輩までも帰ってきた。
先輩も休み明けの仕事にこたえているのか、少し疲れた表情だった。
「リンリン、まだ残ってたの?」
「はい……、ちょっと残ってて。」
机の上に10枚ほど重ねられた書類。今日中に、パソコンにデータを打たなければならない。
「朝、別の仕事して長引いちゃって。
先輩もう終わりですよね?お疲れさまでした。」
私はデータを打ちこむ手を一旦とめて、先輩にぺこっと頭を下げた。
「……そういえば、俺もまだ仕事1個残ってた。」
先輩は、思い出したかのようにそう言って、私の隣である、自身のパソコンを起動した。
「先輩がデスク作業残してるなんて、珍しいですね。」
「うん、特別かな。」
起動するややいなや私の書類を一枚とった。
「え?」
カタカタとキーボードを打ち始める先輩。
「先輩、いいですよ!そんな!」
「いいからいいから。まだお詫びしてなかったしね。」
「……先輩。」
何のことを言っているのかすぐにわかった。あの4人でばたりと出くわしてしまった時のことだ。
もう気にしなくていいのに。
それでも先輩はいまだ気にしている様だった。
先輩が100パーセント悪いわけじゃないのに……。
すべて俺が悪い、そう背負い込んでいるとすぐにわかった。
その痛そうな表情を見れば―――――。