ばかって言う君が好き。

 そうしている内にすっかり乾いた髪を、テレビを見ながらくしでといていた。

「倫子、寝るよ。」

「はーい。」
 寝室から聞こえてきた、ベッドに横になっている彼の声。私はテレビを消して、隣に転がる。

寝室の明かりはまだつけたまま。
二人で向き合って、寝る前の小さな談笑。

特別な日じゃなきゃ、今じゃ腕枕はしなくなってるのだけど、今日はなんだか彼に甘えたくて。

「…左腕ください。」
 お仕事で疲れているであろう彼を気遣いながら、恐る恐るそう言ってみた。

「ばか、どうぞ。」
 照れ笑いしながら彼は私に腕をのばす。

「やった。」
 なるべく体重が腕に乗らないように、腕を首に挟む形にして私は頭を乗せた。

「直人の腕好きだよ。すぐ寝れそう。」

「腕だけかよ。」

「腕だけ。」
 彼の突っ込みにくすくす笑う。

「俺は二の腕好きだよ。」

「あ、ばか。」
 私の二の腕をふにふにと触る彼。

「もう、嫌い。」

「ごめんごめん。」
 それでも触ることをやめない彼に、もうと言いつつ、私はおかしくってまた笑う。

「痩せなきゃなあ。」

「え、十分倫子細いじゃん。」

「じゃあなんでふにふにするんだよ。」

「ごめーん。」
 あーおかしいと言いながら、私たちは笑いあった。

いつも寝る前はこんな感じで、適当に思ったことを話して、何も頭で考えることなくお互い話し合う。他愛ない時間、でも大切な時間。とってもとっても幸せな時間。

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